text– category –
-
知らないままに笑ってろ
「ってかわいいよね」 キルアとの会話を続けながら、頭の隅で、それまで感じていたゴンの視線にまったく別の意味を予想していたは、面食らってゴンを見た。よく通る彼... -
灰色銀河
陽の光を極端に嫌う、わたしのなかの残酷な血が、ときどき低い呻き声をあげる。たいていは自分でそれを制するのだけれど、我を忘れて走り出しそうになったとき、止め... -
お前の苦しみはお前だけ
日が昇ると、センリツとクラピカはそろって廃墟から出ていった。呆れるほど予定通りに。レオリオは空港まで見送りに行くつもりらしく、二人と一緒に出て行った。私は... -
汗と夕立、それと何かが
着替えのためだけにあてがわれたホテルの一室は、清潔で、余所余所しく、とても広かった。ドレスがないことを理由に断ろうとしたのが、そもそもの失敗だった。予備な... -
諦めは悪いほうだけど
もともとは集合住宅として利用されていたらしい、コンクリート造りのこの建物には、ほとんどの部屋のあるべきところに扉がなかった。留め具ごと外れたそれが足元に落... -
夜のガスパール
車窓の向こうを単調な夜が流れゆく。街から零れ出る無数の輝きはその輪郭を失い、なかには、時折点滅するものもあった。まるで篝火が風に揺らめくみたいに。手を伸ば... -
鬼のこころ人しらず
「おとながうそをつくのはね、みんなしらないからさ」 外聞をはばかるように声をひそめ、老婆はいいました。年老いた目を、このときばかりはぎらぎらと力強い輝きにみ... -
まだそこにいて
急激に肌の冷える、あのおぞましい感覚は、いつだって絶望の近くにあった。飽くほどに味わってきたその経験をいまここで繰り返すのかと思うと、心底ぞっとした。気づ... -
似たもの兄妹
「にいちゃん、」 あれはいつのことだったか。が俺の着物の裾を掴んで、真面目腐った顔をした、あの日。 記憶の引き出しを内側から蹴破るような強引さでよみがえって... -
15.
別れるなら朝がいい、とおもうようになったのは、二年前からだと確信している。 前夜までそこにいた痕跡すら拭い取って文字通りあとかたもなく消えたジンに願った、...