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1.
どこまでも続くように思われたエレベータの降下は階数表示のディスプレイが地下百階を示すに即して静かに動きを止めた。機械的な音を立てて開いた扉の向こうから、緊... -
青空に似合う傘をさして
「銀ちゃん、銀ちゃん」 パチン、と小気味よい音がして、白い爪がつめきりの刃のなかに消えた。二、三回同じ音を立ててから、ちいさなつめきりを逆さに振る。広げた新... -
冬のぬけがら
あかいいろの夢を見た。ここのところとんと見なかった胸くその悪い夢だった。理由なんてわかりきってる。ばかあにき…、だれに聞かせるでもなくつぶやくと、乾燥した空... -
easy going
「これはさあ、なんていうか、自慢とかじゃ全然なくってあくまで純粋な疑問として聞いてほしいんだけど、」なんて、うだうだ前置きされたところで俺はすでに聞く気を失... -
不似合いな温度
暑苦しいなぁ、とおもって見ていたら、釣りあがった目のなかの黒い瞳がすばやく動いた。 見られている。互いが互いに。 それは時間にして一秒と続かない一瞬の見つ...